カーボンリサイクル事業

カーボンリサイクル事業

CO₂を、未来をつくる資源にする。

本事業は、世界の各地域で大量に排出されるCO₂を価値ある「資源」へと転換し、その資源を環境配慮型の素材として供給することで地球規模の環境・社会課題解決を図ります。具体的には、CO₂排出量の多い事業者(火力発電所、製鉄所など)*と連携して、排出事業者から排出されるCO₂をCCU技術(Carbon Capture and Utilization)を活用して回収し、廃棄物由来のカルシウムと化学反応させ、炭酸カルシウムを生成します。CO₂を再資源化したこの炭酸カルシウムは、内装材やエクステリア等、建築資材の原料として活用されます。さらに、再生プラスチック等と混練すれば石油由来プラスチックの代替素材となり、様々な用途で供給も可能です。さらに、事業サイクルが生み出すCO₂削減・固定化などの「環境価値」をカーボンクレジットとして創出していきます。これにより、排出量の多い事業者はCO₂排出量を削減し、素材を使用する企業はサプライチェーンにおける環境負荷提言と安定的な低炭素素材の調達を実現します。このスキームを通じて、私たちはCO₂排出課題の解決と持続可能な素材供給という2つの需要に応え、社会全体のカーボンニュートラル達成に貢献します。

*法律に基づき排出量が報告されている大規模事業所(工場、発電所など)のうち、排出量の上位1%の事業所だけで、報告排出量全体の約半分を占めています。排出量上位100事業所(その多くは火力発電所や製鉄所)だけで、日本の総排出量の約26%(4分の1以上)を占めるなど、一部の大規模排出源に集中している実態があります。
出典:環境省「2022年度(令和4年度)温室効果ガス排出・吸収量(確報値)」および「温室効果ガス排出量 算定・報告・公表制度」の集計結果などに基づき算出

事業を取り巻く環境と課題

カーボンニュートラル実現に向け、企業にはサプライチェーン全体での排出削減やESGを踏まえた経営判断が求められています。こうした潮流は、火力発電所や製鉄所など削減が難しい分野にコスト負担や取引制約を生む一方、低炭素素材や排出削減ソリューションの需要を押し上げています。国際社会では規制と市場の変革が進み、EUの炭素国境調整メカニズム(CBAM)などの政策が新たな市場を形成。サプライチェーン全体での削減要請に加え、炭素価格の上昇は企業に代替素材への投資を促す強い動機となっています。結果として脱炭素分野は拡大し、成長市場へと変化しています。CO₂を資源化するカーボンリサイクルは、政府が進めるGX 戦略の投資分野の1つです。TBMはGX排出源の課題と市場の低炭素素材需要の双方に応える、未来の経済スタンダードを創出します。

巨大な市場ポテンシャル:約71兆円規模へ成長するCO₂利活用製品市場

カーボンリサイクル技術を使ってCO₂を原料として作る製品の市場規模は、世界的に急速な拡大が見込まれています。世界の2022年のCO₂利活用製品の市場規模は約9兆円に対して、2050年の市場規模は71兆円規模に達する見込みです。

巨大な市場ポテンシャル 数百兆円規模へ成長するCR市場
出典:富士経済「カーボンリサイクル/CO₂削減関連技術・材料の世界市場を調査」1ドル=155円と仮定

カーボンリサイクルは、再エネ・電化に次ぐソリューション

カーボンリサイクル技術を含むCCUSは、再エネ・電化に続く主要な削減策と位置づけられ、IEAはエネルギー起源によるCO₂削減への貢献度を約19%と評価しています。CO₂を資源として循環させる取り組みは、CO₂排出削減に大く寄与するソリューションです。

CO₂の経済価値「炭素の価格」が示す新たな経済合理性
出典:IEA “Energy Technology Perspectives 2020”

事業内容

プラントビジネスCO₂資源化の「地産地生」モデルを、世界へ。

CO₂排出源の隣接地にCCUプラントを展開し、排出されたCO₂をその場で資源化する「地産地生」モデルの確立を進めていきます。排出・回収・転換・原料供給を一体化することで、輸送エネルギーや中間工程を最小化し、地域単位での効率的なカーボンリサイクルを実現。東北LIMEX工場や横須賀サーキュラー工場での工場運営の商用化で蓄積した設計・運転ノウハウをもとに、プラント設計から建設、運用支援、保守を一貫して提供します。CCU技術とプロセスの最適化に基づくプラント標準モデルを構築し、技術ライセンス供与も視野に入れ、世界各地の産業拠点に展開可能な体制を構築していきます。排出企業との共創により、CO₂削減と新たな収益機会の両立を実現、地域ごとにCO₂を循環させる分散型インフラを構築し、世界中に「CO₂排出を資源に変える拠点」を生み出すことを目指します。

プラントビジネス

高付加価値原料の開発、販売CO₂から、競争力のある原料を生み出す。

排ガス由来のCO₂を原料として生成する「CR炭酸カルシウム(Carbon Recycled Calcium Carbonate)」を開発しています。廃棄物由来のカルシウム源とCO₂を反応させて炭酸カルシウムを生成することで、環境負荷の大幅低減と資源の有効利用を同時に実現。LIMEXで培ったコンパウンド技術、粒径・形態制御の知見を応用し、用途に応じて特性をカスタマイズできる高付加価値原料として進化させています。これにより、プラスチック代替素材、塗料、樹脂添加剤など幅広い用途で原料として活用することが可能です。さらに、コスト競争力に優れた製造プロセスと安定供給体制を確立し、CO₂由来原料の市場を新たなステージへ押し上げます。既に建材メーカー等でも実用化され販売も開始しています。CO₂を新たな資源と捉え、環境価値と機能価値を兼ね備えた原料開発により市場を切り拓きます。

高付加価値原料の開発、販売

環境配慮型素材の開発、販売環境価値を実装した、実用素材の開発。

2024年に上市した「CR LIMEX」をはじめ、CO₂固定化と資源循環性を両立した低炭素素材を展開しています。これらの素材は、CO₂を原料とした炭酸カルシウムを高比率で配合しながらも、成形性・耐久性・意匠性といった実用性能を確保し、“環境価値を持つ実用素材”として多様な用途に採用を進めています。特に、建築内装材や土木資材といった耐用年数の長い製品ではCO₂の固定の効果が大きく、実使用を通じてCO₂の含有量を可視化できる点が評価されます。上市済みの素材による安定的な収益基盤を確立しつつ、環境価値を収益性の高いビジネスとして推進していきます。これにより、素材産業における脱炭素の新たなスタンダードを創出します。環境性能が経済合理性と並び立つ社会の実現へ、素材そのものに環境価値を組み込み、持続可能なものづくりの新しい常識を築きます。

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環境配慮型素材の開発、販売

CCU技術の社会実装による
カーボンクレジットの創出

私たちはプラントビジネス、高付加価値原料、次世代低炭素素材の開発、販売を通じて、事業サイクルが生み出すCO₂削減・固定化などの「環境価値」を、大きく市場が成長するカーボンクレジットをはじめ、多様な形で経済価値化する取り組みを進めていきます。カーボンプライシングへの対応を通じて、脱炭素社会における競争優位を確立。素材・製品としての実体経済価値と、環境価値を起点とした新たな経済的価値の双方を創出することで、事業全体の成長を持続的に加速させます。

出典:各種情報源を元にTBM作成:*1 矢野経済研究所 *2 Grand View Research *3 2024年 カーボンクレジット市場・価格予測コンセンサス調査(株式会社exroad) *4 ResearchAndMarkets *5 Morgan Stanley 日本のアップサイドシナリオは、ベースシナリオにおける日本の世界に対する比率を世界のアップサイドシナリオに乗じて算出。1USD=150円で換算。

世界のカーボンプライシングの動向

炭素税・国境炭素調整の事例

スウェーデン(炭素税): 1991年から炭素税を導入しています。
税率はCO₂排出量1トン当たり約19,240円。(2024年時点)
EU(国境炭素調整メカニズム:CBAM): EU域外からの輸入品(鉄鋼、セメント等)に対し、製造時の炭素排出量に基づいて課金する制度です。(2026年から本格導入が予定) 出典: 経済産業省 資源エネルギー庁「諸外国のカーボンプライシングの動向(2024年2月)」

排出量取引制度の事例

EU(EU排出量取引制度:EU-ETS): 欧州連合(EU)では排出量取引制度が運用されています。排出枠の価格は、CO₂排出量1トン当たり70ユーロ(約11,000円)前後で推移しています。
出典: ICAP (International Carbon Action Partnership) "Emissions Trading Worldwide: Status Report"

炭素除去(ネガティブエミッション)の事例

Microsoft(除去系クレジットの購入): Microsoftは2030年のカーボンネガティブ達成目標に向け、炭素除去(CDR)クレジットの購入を進めています。
一例として、大気から直接CO₂を回収する(DAC)技術によるクレジット50万トンの購入契約を米1PointFive社と締結しています。(2024年発表)
出典: Microsoft公式ブログ "Microsoft and 1PointFive announce agreement for direct air capture carbon removal" (2024年7月23日)

お問い合わせ

CO₂の資源化に先進的に取り組むことは、企業にとって競争優位を築く重要な要素です。
私たちは、排出量の多い事業者や素材・建材を扱う企業、低炭素技術や新素材開発に関心を持つパートナーとともに、カーボンリサイクル事業の価値創出を加速させます。
事業へのご相談やご質問は、下記よりお気軽にお問い合わせください。